グロース・キャピタル株式会社

[事例] サイバーセキュリティクラウド/政府系ファンドへの新株式発行を組み合わせた計21.4億円の資金調達と個人投資家向けIRの支援

サイバーセキュリティクラウド/政府系ファンドへの新株式発行を組み合わせた計21.4億円の資金調達と個人投資家向けIRの支援
株式会社サイバーセキュリティクラウド

株式会社サイバーセキュリティクラウド

市場:東証グロース(4493)
業種:情報・通信
事業概要:クラウドとWebセキュリティ領域に特化し、国内売上高シェアNo.1のクラウド側WAF「攻撃遮断くん」やフルマネージドセキュリティサービス「CloudFastener」等を提供

「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」を理念に掲げ、企業の経済活動に欠かせないWebセキュリティサービスを展開する株式会社サイバーセキュリティクラウド。政府系ファンドを大株主に迎え入れる新株式の発行と新株予約権を組み合わせたファイナンスを主導した取締役CFOの倉田雅史氏に、グロース・キャピタルとともに取り組んだファイナンスや個人投資家向けIRについて伺った。

案件概要

案件概要

今回のファイナンスの目的と経緯について教えてください。

当社は2021年に、2025年の売上高50億円、営業利益10億円を目標とする成長戦略を掲げ、現在はその最終年度を迎えています。この戦略の先にある中長期的な成長を見据え、新たな主力プロダクトである「CloudFastener」(クラウドファスナー)の拡販に加え、クラウド領域およびサイバーセキュリティ領域を軸としたM&Aを、今後の成長の柱にしていく方針です。社内では、資金調達の実行タイミングについて議論がありましたが、そのような中、グロース・キャピタルを通じて、政府系ファンドであるJIC VGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合(以下、OPF1)からの出資を含むファイナンスの提案をいただきました。もともと当社では官公庁・ガバメント領域との連携強化を検討していたため、OPF1を株主に迎え入れることは、単なる資金調達にとどまらず、事業成長を加速させる好機になると考え、M&Aに先行してファイナンスを実行することを決断しました。

倉田雅史(くらた・まさふみ)氏

【プロフィール】 倉田雅史(くらた・まさふみ)

株式会社サイバーセキュリティクラウド 取締役CFO。
1991年生まれ。法政大学3年時に公認会計士試験合格。在学中より太陽有限責任監査法人に入所し、上場企業の監査、上場準備支援、内部統制構築支援、財務アドバイザリー等に従事。
2017年、株式会社サイバーセキュリティクラウドへ入社。2019年、取締役に就任。2020年、東証マザーズ上場。

今回のファイナンスでは、どのようなポイントを重要視されましたか。

まず、単に資金調達するだけではなく、今回のファイナンスを通じて市場や投資家に対して当社の成長に向けた強い意思を示すことを重視しました。政府系ファンドであるOPF1を大株主に迎え入れることは、官公庁領域との連携強化を視野に入れたものであり、事業の信頼性を高める点でも大きな意義があると考えています。また、グロース・キャピタルに割当てた新株予約権の行使価額を、発行決議日前日終値より10%高い水準に設定することで、さらなる成長を目指すという当社の意志を示す設計としました。

さらに、ファイナンス全体の設計においては、「即時に必要な資金」と「中長期で必要となる資金」のバランスや、希薄化の影響も慎重に考慮しました。新株式発行により約18.4億円の資金を即時に調達できたことで、M&Aのタイミングや対象の選定においてより柔軟な意思決定が可能となりました。また、約3億円の追加調達を見込んだ新株予約権の発行を組み合わせたことで、将来的な調達額の最大化を目指しつつ、一時的な希薄化も抑制する構造としました。

なぜ、グロース・キャピタルを新株予約権の割当先として選定されたのでしょうか。

まず大前提として、2023年頃から本格的に資金調達を検討し始めて以降、約2年間にわたり、グロース・キャピタルとは継続的に対話を重ねてきたという経緯があります。その中で、単なる資金面のサポートにとどまらず、個人投資家向けIRのあり方など、多面的な観点から実践的な知見を共有いただき、信頼関係を築けたことは大きな要因でした。
さらに、政府系ファンドであるOPF1との連携スキームをご提案いただけた点も選定の決め手となりました。

現在、日本のサイバーセキュリティ市場は外資系企業が大きなシェアを占めており、この状況に対しては企業のみならず、政府も強い危機感を持っています。実際、今年3月に経済産業省が発表した「サイバーセキュリティ産業振興戦略」では、日本のサイバーセキュリティ関連企業の売上を2034年度までに3兆円規模まで引き上げることが盛り込まれています。国としても国内企業の成長を後押しする中で、政府系ファンドを大株主に迎え入れることは、当社の事業展開における信頼性や社会的意義を高めるうえで極めて重要と判断しました。グロース・キャピタルは、資本政策の立案からOPF1との連携構築に至るまで、両面で重要な橋渡し役を担ってくれました。

貴社における個人投資家向けIRの必要性について教えてください。

当社は個人投資家の比率が比較的高く、1万人を超える株主がいらっしゃいます。今の時価総額水準としては機関投資家との面談数も少なくはありませんが、流動性を担保しつつ、時価総額をさらに上げていくためには、個人投資家の方々に持ち続けてもらうことに加え、新たな個人投資家を開拓することも重要と考えています。

個人投資家向けIR支援で印象に残っている点、これからの取り組みで期待していることはありますか。

グロース・キャピタルにアレンジ頂いたIRセミナーでは、1,000人以上の個人投資家にリーチできたという規模感もさることながら、イベント後の「振り返り」が特に印象的でした。具体的には、参加者への調査内容に独自性があることに加え、それをもとにした分析の質も高いと感じています。

また、個人的にはイベント前後にご一緒した壁打ちも印象に残っています。時価総額規模別のIR戦略等、我々に必要な情報を整理・分析したうえで議論に臨んでくださるので、壁打ちをすればするほど、「私たちの強み、今後の成長戦略をどう投資家に伝えていくべきか」といった本質的な部分の解像度がどんどん上がっていくのを感じていました。今後についても、多くの個人投資家へリーチできる機会や、さらにアップデートされた振り返り、壁打ちをご一緒できるのを楽しみにしています。

サイバーセキュリティクラウド事例01

最後に、資金調達や個人投資家向けIRに課題感をもっている上場ベンチャーのみなさんにメッセージをお願いします。

今回のファイナンスを通じて強く実感したのは、資金調達において最も大切なのは「何のために調達するのか」という目的を、社内外に対して明確にすることです。調達手段やスキームは多様化していますが、それらはあくまで手段であり、本質は企業の意思や成長戦略にあります。誰に株主になってもらうのか、どのような構造で調達するのかは、その企業の未来への姿勢そのものを映すメッセージになります。

私たちの場合は、グロース・キャピタルと約2年間にわたって継続的に議論を重ねる中で、資本政策はもちろん、個人投資家との向き合い方やIR戦略といった多面的な視点から多くの示唆を得ることができました。そして、今回のファイナンスについては投資家の皆様から前向きなフィードバックを多数いただき、改めて目的起点の資金調達の重要性を実感しています。

もし、ファイナンスやIRに課題感を持たれているのであれば、グロース・キャピタルのような伴走型で支援してくれる信頼できるパートナーとともに、目的を軸に設計するという選択肢は、大きな力になるはずです。

(了)

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